No.287(2026/10/23):JICPAが実務指針第38号(LPSの会計・監査)を改正――時価評価の契約は存続期限前後も時価で、処分可能価額は注記へ

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第287回の今回は、日本公認会計士協会の公表資料より、業種別委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正についてご紹介します。
日本公認会計士協会(JICPA)は2026年10月16日、業種別委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計上及び監査上の取扱い」の改正と、公開草案に対するコメントの概要及び対応を公表しました。改正は10月7日の常務理事会で承認されたもので、公開草案は8月21日から9月18日まで意見募集が行われていました。投資事業有限責任組合(LPS)を運営する無限責任組合員だけでなく、LPSに出資する事業会社や金融機関にも関係する改正です。
背景には二つの動きがあります。一つは、2025年3月11日に公表された改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」です。一定の要件を満たす場合、組合等に出資する企業(組合員)は、組合等の構成資産に含まれる全ての市場価格のない株式(その企業の子会社株式・関連会社株式を除きます)を時価で評価し、組合等への出資の会計処理の基礎とすることが認められました。もう一つは、2025年6月23日に経済産業省から公表された投資事業有限責任組合の契約例とその解説で、その第25条第4項に、無限責任組合員が投資証券等の評価を時価や公正価値を用いて行う旨が示されました。
改正前の第38号では、組合契約で投資を時価評価すると定めていても、存続期限まで1年未満となった「直前期」には、資産の評価が清算時の処分可能価額と大きく相違すると見込まれる場合に早期換金化による流動性リスクを加味した時価で、存続期限に投資が残った「到来期」には速やかな換価処分を前提とした処分可能価額で評価するとされていました。これは、投資は組合契約に定めるところにより評価するというLPS法施行規則第11条第4項と矛盾し得るものでした。また、組合等の時価評価を前提に出資の会計処理を行っている組合員は、直前期・到来期に組合が時価とは異なる評価を行うと、「組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること」という移管指針第9号の要件(第132-2項(2))を満たせなくなるおそれもありました。
改正後は、組合契約で評価方法を時価とする場合、直前期・到来期でも時価で評価します(第6-5項、第25項、第27項)。そのうえで、処分可能価額が時価と大きく乖離する場合には、処分可能価額の合理的な見積額とその評価方法を注記します。処分可能価額の説明からは「速やかに」の文言が削除されました。一方、いわゆる通産省モデルのように、取得価額などと処分可能価額のいずれか低い額(回収可能価額)で評価する契約では、評価額は結果として改正前と変わらず、実務への影響は特にないと整理されています。
協会の補足説明資料の設例(金額は説明用)を簡略化すると、取得価額80の非上場株式が存続期限に残り、秩序ある取引なら100で売れるものの、早期換金化では50でしか処分できないケースです。時価評価の契約では、改正前は直前期・到来期に50で評価していましたが、改正後は時価100で評価し、処分可能価額50は注記で示すことになります。
監査面では、投資の評価に関する監査意見は、組合契約に定める評価方法に準拠しているかどうかについて表明するものであることが改めて明確にされました(第9項、第60項〜第63項)。到来期に組合員の同意に基づく処分可能価額での評価を求めていた規定や、監査契約の解除の検討に関する記述は削除されています。注記された処分可能価額などが清算期間の換価処分見込額を反映していない場合は否定的意見の表明を検討し、処分可能価額について十分かつ適切な監査証拠が得られない場合は意見を表明できない可能性がある点に留意するとされています(第62項)。
このほか、改正前は減損損失を実現損失として扱うとしていましたが、改正後は評価損益を未実現損益とすることを原則とし、減損を実現損失(投資償却損)として扱うことも妨げないと整理されました(第12項(3))。また、キャリード・インタレストは分配、成功報酬は費用として処理することが明確化されました(第36項)。さらに、用語の「有責組合」から「LPS」への変更、組合員の会計処理や金融商品取引法に関する記載の削除、財務諸表等のひな型の見直しも行われています。
適用は、2027年1月1日以後開始する事業年度又は会計期間に係る監査からで、2026年12月31日以後終了する事業年度又は会計期間に係る監査からの早期適用も認められます(第136項)。適用初年度に第12項(3)又は第25項の改正で会計処理を変更する場合は、累積的影響額を期首未実現利益又は期首未実現損失に加減し、その影響額を注記します。無限責任組合員にとっては、組合契約上の評価方法の確認と、存続期限が近いファンドの処分可能価額の見積り・注記の準備が当面の課題です。出資する企業にとっても、出資先LPSの評価方法が自社の会計処理に影響し得るため、改正内容を把握しておくことが大切です。
【参考資料】
投資事業有限責任組合の会計処理や監査、今回の改正への対応でお困りのことがございましたら、大門綜合会計事務所にお気軽にご相談ください。会計監査・会計コンサルティングのご依頼・お問い合わせはこちらから承っております。
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