No.285(2026/10/09):飲食料品の消費税率が1%へ――令和9年4月からの2年間の引下げと、還付を受けるための届出の特例

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第285回の今回は、政府の大綱と国税庁の公表資料より、飲食料品の消費税率の臨時的な引下げと、事業者が早めに確認したい届出の特例についてご紹介します。
政府は2026年9月15日、「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」を閣議決定しました。国税庁も、この大綱に沿った説明として、パンフレットとQ&Aを公表しています。さらに10月9日には、関連する法律案が閣議決定され、国会に提出されました。以下の内容は、法案が国会で可決・成立した場合のものである点にご留意ください。
引下げの対象は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの2年間に行われる飲食料品の譲渡と、保税地域からの飲食料品の引取りです。税率は現行の8%から1%(消費税0.78%、地方消費税0.22%)に下がります。対象となる飲食料品の範囲は、現在の軽減税率の対象と同じです。酒類や外食、ケータリング等(有料老人ホーム等での提供など一定のものを除きます)は引き続き10%で、テイクアウトや出前・宅配は1%となります。週2回以上発行される新聞の定期購読は、引下げ後も8%のままです。
実務上の大きな影響は、売上げと仕入れの税率差が広がることです。飲食料品を販売する事業者は、売上げの税率が1%になる一方で、包装資材や光熱費、店舗の賃料などの経費には引き続き10%の税率が適用されます。売上げに係る税額より仕入れに係る税額が大きくなれば、一般課税(本則課税)で申告することで還付を受けられる可能性があります。しかし、免税事業者や簡易課税制度を選択している事業者は、そのままでは還付を受けられません。しかも現行制度では、課税事業者の選択や簡易課税の取りやめには、原則として課税期間が始まる前の届出が必要です。
そこで、二つの届出の特例が設けられる予定です。一つ目は、飲食料品の譲渡を行う免税事業者の特例です。令和9年4月1日の属する課税期間中に「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば、その課税期間から課税事業者となることができます。課税事業者となるのはその課税期間の初日からですので、例えば個人事業者や12月決算の法人は令和9年1月1日から課税事業者となり、1月から3月までの飲食料品の販売は8%で申告します。ただし、課税事業者を選択すると、原則として2年間は課税事業者として申告が必要です。
なお、この特例によらず、現行のインボイス制度の経過措置により、インボイス発行事業者の登録申請をして登録希望日から課税事業者となる方法もあります。令和9年4月1日から登録を受けるには、同年3月17日までに申請書を提出します。この方法でも、原則として登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までは課税事業者として申告が必要となり、取引先の求めに応じてインボイスを交付する義務も生じます。例えば個人事業者が令和9年4月1日に登録した場合、免税事業者に戻れないのは原則として令和11年12月31日までで、課税事業者選択届出書による場合(令和9年1月1日から令和10年12月31日まで)より長くなります。
二つ目は、飲食料品の譲渡を行い、簡易課税制度を選択している事業者の特例です。令和9年4月1日の属する課税期間中に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出すれば、その課税期間から一般課税で申告できます。簡易課税を選択した事業者に課される2年間の継続適用要件(いわゆる2年縛り)も、この課税期間には適用されません。どちらの特例も、届出書の「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載して提出します。
説明用の仮の数値で考えてみます。3月決算の食品小売業A社は免税事業者で、令和9年4月からの1年間に飲食料品を税込808万円販売したとします。仕入れは、食品が税込505万円(1%)、資材や賃料などが税込220万円(10%)です。売上げに係る税額は8万円、仕入れに係る税額は5万円と20万円の合計25万円となります。特例で課税事業者を選択し一般課税で申告すれば、差額の17万円(地方消費税を含む)が還付される計算です。
もっとも、課税事業者になればインボイスの保存や帳簿の記帳、申告の事務が生じます。令和11年4月に税率が8%へ戻った後の扱いも含めて、有利不利を見極める必要があります。なお、簡易課税を続ける場合も、業種にかかわらず飲食料品の売上げに係る税額と同額を仕入れに係る税額とする計算の特例が設けられる予定で、飲食料品の売上げ分については納付税額が生じません(還付は受けられません)。この簡易課税の計算の特例や、価格表示(総額表示)・中間申告の特例、定期便・通信販売の経過措置については、次回あらためてご紹介します。
【参考資料】
課税事業者の選択や簡易課税の取りやめが自社にとって有利かどうかは、顧問税理士の方と早めにご確認ください。税率ごとの区分経理や会計システムの設定、経理体制の整備など、会計・経理面でお困りのことがございましたら、大門綜合会計事務所にお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらから承っております。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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