No.286(2026/10/16):飲食料品の消費税率引下げ法案が国会へ――値札の総額表示、定期便・通信販売、中間申告の特例

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第286回の今回は、内閣官房・財務省と国税庁の公表資料より、国会に提出された飲食料品の消費税率引下げ法案と、税率が切り替わる前後の実務対応についてご紹介します。
政府は2026年10月9日、「租税及び社会保険料による負担の軽減のための飲食料品に係る消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の支給に関する法律案」を閣議決定し、第222回国会に提出しました。法案は、令和9年4月1日から令和11年3月31日までの間、飲食料品の消費税率を0.78%(地方消費税と合わせて1%)とする内容で、施行日は令和9年4月1日とされています。対象となる飲食料品の範囲は現在の軽減税率(8%)の対象と同じで、酒類や外食は1%の対象外となり、引き続き10%が適用されます。あわせて、一定の要件を満たす就業者に毎年1回支給する「就業者負担軽減支援金」も盛り込まれています。
法案には、税率引下げを実施するための措置として、本則課税への移行に係る届出の特例、簡易課税制度の特例、中間申告制度の特例、総額表示義務の特例、定期供給契約・通信販売に関する税率の経過的な取扱いが設けられています。届出の特例は前回取り上げましたので、今回は残りの論点を見ていきます。なお、以下の内容は、法案が国会で可決・成立した場合のものである点にご留意ください。
小売店にとって身近なのが、総額表示義務の特例です。消費者に価格を表示する際は税込価格の表示が義務ですが、夜間の値札の貼り替えが間に合わない、商品パッケージやカタログに価格が印字されている、といった、総額表示に直ちに対応することが困難な事情がある場合に限り、特例が認められます。具体的には、実際の支払額と誤認させない掲示等を行うことを条件に、引下げ前の令和9年2月1日から3月31日までは税率1%による税込価格を、引下げ後の4月1日から5月31日までは税率8%による税込価格を表示できます。税率が8%に戻る令和11年4月1日の前後(同年2月1日から5月31日まで)にも、同様の特例が設けられます。ただし、税抜価格だけを表示する方法は引き続き認められません。
次に、定期便や通信販売の経過措置です。令和9年4月1日以後の販売でも、同年1月1日より前に締結した定期供給契約(不特定かつ多数の者に定期的に継続して供給する契約をいいます)に基づき4月1日より前に対価を受け取っているもの(受領済みの部分に限ります)には、引き続き8%が適用されます。通信販売で1月1日より前に販売条件を提示し、4月1日より前に申込みを受けたものも同様です。代金先払いの食材の定期便や、お中元などのカタログ販売が典型例です。ただし、税率1%を前提とした契約や条件提示である場合や、1月1日以後に契約金額を見直すなどして契約等を変更し、税率1%に基づく取引とした場合は、この経過措置の対象外となり、税率1%が適用されます。
適用税率は、売手が飲食料品を提供する時点で判定します。売手が出荷基準、買手が検収基準で計上していて、3月末に出荷し4月に納品される取引のように計上時期がずれる場合も、買手は売手が適用した税率(インボイスに記載された税率)に基づいて仕入税額控除を行います。また、3月31日以前に8%で販売した商品の返品や貸倒れが4月以後に生じた場合は、8%で調整計算を行います。
中間申告にも特例があります。前期の実績を基に計算する中間申告税額は、税率引下げで納付税額が減る事業者にとって過大になりがちです。そこで、令和9年4月1日以後に開始する中間申告対象期間については、直前の課税期間の飲食料品の売上げ・仕入れに1%が適用されたものとして計算し直した税額に基づく中間申告税額を記載して、仮決算による中間申告書を提出することができます。税率が戻る令和11年4月1日以後に開始する期間についても、飲食店のように仕入れが1%で売上げが10%の事業者では、仕入税額が増えて中間申告税額が過大になりやすいことから、8%で計算し直す同様の特例があります。
簡易課税制度を適用する事業者には、飲食料品の売上げに係る税額と同額を仕入税額とする計算の特例が設けられます。説明用の仮の数値で、飲食料品の売上げに係る税額が10万円、雑貨(第2種事業、みなし仕入率80%)の売上げに係る税額が20万円の小売店を考えます。仕入税額は、飲食料品分の10万円と雑貨分の16万円を合わせた26万円となり、納付税額は4万円です。飲食料品の売上げからは、実質的に納付税額が生じない仕組みといえます。
準備にあたっては、1月1日(経過措置の基準日)、2月1日(表示の特例の開始)、4月1日(税率の引下げ)という日付を軸に、レジや会計システムの改修、値札や契約条件の見直しを進めておくことをおすすめします。法案の審議状況とあわせて、引き続き最新の情報を確認していきましょう。
【参考資料】
届出の要否や中間申告の方法など、消費税の申告に関する判断は、顧問税理士の方と早めにご確認ください。税率ごとの区分経理や会計システムの設定、経理体制の整備など、会計・経理面でお困りのことがございましたら、大門綜合会計事務所にお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちらから承っております。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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