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No.277(2026/08/14):【LPS公正価値④】【実務】上場株式・市場性のある資産の評価――市場価格と例外

8月14日
読了時間: 4分


こんにちは


大門綜合会計事務所スタッフです。



毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連の基礎・Tips等をお伝えしています。

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本シリーズ「LPS投資資産の公正価値評価」(全10回)の第4回です。今回は、【実務】上場株式・市場性のある資産の評価――市場価格と例外についてお伝えします。



公正価値の階層における「レベル1」とは、活発な市場において同一の資産の市場価格が公表されており、それをそのまま用いる評価方法を指します。上場株式をはじめとする市場性のある有価証券は、原則としてこのレベル1に該当し、算定基準日の市場価格(通常は終値またはそれに準ずる価格)をもって公正価値とするのが基本的な考え方です。企業会計基準第30号(時価の算定に関する会計基準)においても、IPEVガイドラインにおいても、活発な市場が存在する場合には市場価格を第一の拠りどころとするという原則は共通しています。


では、市場価格さえあれば評価は常にシンプルかというと、実務ではそうでない局面があります。一つ目は、大量保有に伴う「市場インパクト」の問題です。ファンドが非常に大きなポジションを抱える場合、全量を一度に売却すれば価格が下落するため、「その分だけ割り引くべき」という発想が生まれやすいものです。しかし企業会計基準第30号が準拠するIFRS第13号は、レベル1に分類される金融商品について、いわゆる「大量保有ディスカウント(ブロッケージ・ファクター)」を適用してはならないと明確に定めています。公正価値は「1単位当たりの市場価格×保有数量」として算定するのが原則であり、この点を誤ると評価が過度に保守的になりすぎ、投資家への説明にも支障をきたすことがあります。


一方、売却制限(ロックアップ)の存在は、調整を検討する根拠として認められる場合があります。ロックアップとは、IPO(新規株式公開)の際などに設けられる、一定期間内の株式売却を禁じる契約上の制限です。制限期間中は市場価格での現金化が法的・契約的に不可能であるため、基準日時点の市場価格がそのまま「直ちに受け取れる金額」を表しているとは必ずしも言えません。こうした制限が資産の特性として市場参加者にも考慮されると判断できる場合には、制限期間の長さ・市場のボラティリティ・流動性リスクなどを加味した調整が実務上検討されることがあります。


ただし、その調整は根拠を持って慎重に行う必要があります。オプション評価モデルを活用した流動性リスクの定量化など、合理的な評価手法を採用し、算定プロセスを文書化することが不可欠です。また、ロックアップが株式そのものに付随する特性(資産レベルの制限)か、それとも特定の保有者に課された契約上の制限にとどまるものかによって、調整の要否や幅の判断は変わりうるため、適用する会計基準の解釈とあわせて慎重な検討が求められます。


具体的な場面で考えてみましょう。あるLPSが国内スタートアップのIPO直後に上場株式を100万株保有しており、算定基準日の終値が仮に1株1,000円(合計10億円相当)だったとします。ただし、IPO後180日間の売却禁止条項が設けられており、基準日時点でまだ120日の制限期間が残っていたとします。単純に10億円を公正価値とするか、制限期間中の株価変動リスクや流動性の欠如を反映した調整を加えるかが実務上の論点となります。仮に一定のディスカウント(合理的な範囲として数%から十数%程度の幅で試算される場合もあります)が妥当と判断されるならば、その根拠を明示したうえで計上することになります。この数値はあくまで説明のための仮の例であり、実際の評価は契約条件・市場環境・適用会計基準によって大きく異なります。


上場株式であっても「市場価格があるから評価は簡単」という話ではなく、保有規模やロックアップの有無によって論点が生じることをご理解いただけたでしょうか。大量保有ディスカウントは原則として適用不可、ロックアップ調整は根拠の明確化と文書化のうえで慎重に――この二点が実務判断の核心です。



自社ファンドの投資資産の公正価値評価(非上場株式の評価、優先株の配分、評価の文書化、監査対応)にご不安があれば、ファンド会計・バリュエーションに精通した公認会計士にご相談いただくのが近道です。大門綜合会計事務所の会計監査・コンサルティングのご相談はこちらから承っています。



それでは、今日はこの辺で。

良い週末をお過ごしください。

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