No.276(2026/08/07):【LPS公正価値③】【基礎】LPSの会計の枠組み――会計規則・実務指針・IPEVガイドラインの位置づけ

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本シリーズ「LPS投資資産の公正価値評価」(全10回)の第3回です。今回は、【基礎】LPSの会計の枠組み――会計規則・実務指針・IPEVガイドラインの位置づけについてお伝えします。
投資事業有限責任組合(LPS)の会計は、複数の規範が重なり合うかたちで成り立っています。まずその全体像を把握しておくことが、実務を正確に進めるうえでの出発点となります。
LPSの会計処理に関しては、「投資事業有限責任組合会計規則」(経済産業省令)が基本的な枠組みを定めています。この規則は、組合財産の評価方法や財務諸表の様式などについて規定しており、ファンドの種類や設立根拠によって適用される規則の内容が異なる場合があります。また、日本公認会計士協会(JICPA)が公表する実務指針や研究報告も、実務上の処理方針を判断するうえで重要な参照基準となります。これらの文書は、法令が定める範囲を補完し、実務担当者が具体的な会計処理を行う際の手がかりを提供しています。
さらに、国際的な実務水準として広く参照されるのが「IPEV(International Private Equity and Venture Capital)バリュエーション・ガイドライン」です。IPEVガイドラインは法的拘束力を持つ規範ではありませんが、PE・VCファンドの投資資産の公正価値評価に関する実務的な手法と考え方を体系的に整理したものとして、世界中のファンド実務で採用されています。日本においても、特にクロスボーダーの投資や機関投資家(LP)が参加するファンドでは、IPEVガイドラインの考え方に沿った評価を採用するケースが増えています。
公正価値評価の基本方針として実務上重要なのは、評価日・評価頻度・評価方針の一貫性という三点です。評価日とは、投資資産の価値を測定する基準となる日付のことで、多くの場合は各決算期末日が評価日として設定されます。評価頻度については、組合契約の規定やLPへの報告義務に応じて異なる場合がありますが、四半期ごとに評価を行い基準価額(NAV)を算定するケースも見られます。評価方針の一貫性とは、一度採用した評価手法を正当な理由なく変更しないことを意味します。評価方針を恣意的に変更することは、期間比較可能性を損なうとともに、監査人や投資家との信頼関係にも影響しうるため、慎重な運用が求められます。
具体的な場面を想定してみましょう。仮に、国内スタートアップ10社に投資するVCファンドがあるとします。このファンドでは、3月末・6月末・9月末・12月末の年4回を評価日として定め、各評価日時点のポートフォリオ全体の公正価値合計をもとに基準価額を算定し、LPへ四半期報告書を送付しています。3月末評価の際には、各投資先の財務情報・資金調達ラウンドの状況・マーケット比較データ等を収集したうえで、前回と同一の評価手法(例えば直近ラウンドの取引価格を出発点とする方法)を適用します。このとき、評価方針や使用した主要データを評価記録に残しておくことが、後日の監査対応や投資家説明の基礎となります。
GP・管理会社の評価体制も、実務上の重要な論点です。評価の独立性と客観性を確保するため、投資判断を担うチームとは分離されたバックオフィス・CFO機能が評価プロセスを管理する体制が望ましいとされます。規模の大きなファンドでは外部の評価専門家(独立した第三者バリュエーター)を活用するケースもあります。外部バリュエーターの関与は、評価の信頼性を高め、監査対応や投資家への説明責任を果たすうえでも有効な手段となりえます。
次回は、公正価値の定義と評価階層(レベル1・2・3)について、具体的な投資資産への当てはめを交えて解説します。
自社ファンドの投資資産の公正価値評価(非上場株式の評価、優先株の配分、評価の文書化、監査対応)にご不安があれば、ファンド会計・バリュエーションに精通した公認会計士にご相談いただくのが近道です。大門綜合会計事務所の会計監査・コンサルティングのご相談はこちらから承っています。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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