No.274(2026/07/24):【LPS公正価値①】【入門】LPSと投資資産の公正価値評価とは?――なぜ時価評価が重要か

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本シリーズ「LPS投資資産の公正価値評価」(全10回)の第1回です。今回は、【入門】LPSと投資資産の公正価値評価とは?――なぜ時価評価が重要かについてお伝えします。
投資事業有限責任組合(以下、LPS)は、無限責任組合員(GP:General Partner)と有限責任組合員(LP:Limited Partner)が組成する、主に未上場企業等への投資を目的としたファンドの一形態です。GPはファンドの運営・投資判断を担い、LPは主に出資者として参画します。こうした仕組みにより、機関投資家や個人投資家などのLPが、専門的な知見を持つGPを通じて非上場企業や多様な投資対象へアクセスできるのがLPSの特徴です。
そのLPSが保有する投資資産――未上場株式、上場株式、社債など――をどのように「評価するか」は、投資家への報告や運用成績の算定において根幹をなす問題です。ここで中心となるのが「公正価値(フェアバリュー)」という概念です。
公正価値とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると仮定した場合に、資産の売却によって受け取るであろう価格のことです。企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」では、こうした出口価格(exit price)の概念として時価を定義しています。また、プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル業界で国際的に広く参照されるIPEVガイドライン(International Private Equity and Venture Capital Valuation Guidelines)も同様の基本的考え方を採用しており、公正価値評価のグローバルスタンダードとして機能しています。
では、なぜ取得原価のままではなく、公正価値で評価することが重要なのでしょうか。
例えば、あるファンドが未上場企業Aに1億円を出資したとします(以下は理解を助けるための仮の数値例です)。その後、企業Aが新たな投資家から追加の資金調達を実施し、そのラウンドのバリュエーションを参照するとファンドの持分価値が1億8,000万円相当と試算されるケースを考えてみましょう。このとき、帳簿上に取得原価の1億円が記載されたままであれば、LPが受け取るレポートの「ファンド純資産」は現実の価値を正確に映し出しません。IRR(内部収益率)などのパフォーマンス指標も、公正価値に基づかなければ実態に即した算定ができません。逆に、投資先の業況が悪化して価値が大幅に毀損していても帳簿に反映されなければ、投資家は適時に適切な判断を行う機会を失ってしまいます。
投資家にとって、参加するファンドの現在価値を正確に把握することは、ポートフォリオ管理や追加投資・解約の意思決定のために不可欠です。GPにとっても、公正価値評価に基づく透明性の高い情報開示は、投資家との信頼関係を維持・構築するうえで欠かせない要素となります。
なお、上場株式には市場価格という明確な参照点がありますが、LPSが多く投資する非上場株式については市場価格が存在しません。そのため、類似会社比較法(マルチプル法)や割引キャッシュ・フロー法(DCF法)などの評価手法を用いることになります。また、LPSの会計処理や評価の詳細な取り扱いは、組合の種類・契約内容・適用する会計基準によって異なる場合があります。
この連載では、こうした公正価値評価の基礎的な概念から出発し、評価手法の選択と適用、開示実務、監査対応まで、全10回にわたって段階的に解説していきます。次回は、公正価値評価を理解するうえで欠かせない「インプットのレベル分類(レベル1・2・3)」を取り上げます。帳簿上の数字の「信頼性の根拠」を見分けるための枠組みであり、実務上の論点を読み解く基礎となる重要な概念です。
自社ファンドの投資資産の公正価値評価(非上場株式の評価、優先株の配分、評価の文書化、監査対応)にご不安があれば、ファンド会計・バリュエーションに精通した公認会計士にご相談いただくのが近道です。大門綜合会計事務所の会計監査・コンサルティングのご相談はこちらから承っています。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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