No.213(2025/9/19): 研究開発税制拡充と最新税務トピック
- DAIMON STAFF
- 9月19日
- 読了時間: 5分
更新日:10月3日

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
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第213回の今回は税務通信第3867号(2025/09/15)より令和7年度税制改正や企業実務に影響する最新トピックについてご紹介します。
経済産業省が求める研究開発税制の拡充
経済産業省は令和8年度税制改正要望において、現在の研究開発税制の拡充・延長を求めました。企業が行う研究開発投資に対し、総額型税額控除やオープンイノベーション型(回収型)税額控除の上限を引き上げ、控除対象費用にソフトウェアなどの無形資産取得費を含める案が提示されています。さらに、国が重点分野として掲げる「戦略技術領域」については、税額控除率の上乗せや控除期間の延長を認める新たな仕組みを創設し、企業の大胆な研究投資を後押しする方針です。望むべきは、中小企業向けの特別措置枠の恒久化や、赤字企業でも税額控除を適用できるよう繰越控除期間の見直しも盛り込まれており、イノベーション促進と投資の国内回帰が狙いとされています。
リース会計基準と短期・小額リースの消費税取扱い
新リース会計基準では、ほとんどすべてのリース取引をオンバランス化し、使用権資産とリース負債を計上することになりました。ただし、1年以内の短期リースと300万円未満の小額リースについては旧基準と同様にオフバランスで処理できるため、企業はリース料を費用として認識します。消費税では、所有権移転ファイナンス・リースの場合は資産の取得として一括で仕入税額控除を行いますが、短期・小額リースは賃貸借として扱われるため、支払リース料ごとに分割して仕入税額控除を行う必要があります。新基準適用企業では会計と税務の取扱いが異なる部分があるため、社内システムの設定や税務申告書の記載事項を早めに確認しておくことが重要です。
社員旅行・社内レクリエーション費用の非課税判定
国税庁は、会社が社員旅行や社内クリエーションに要する費用の非課税扱いについて、参加率50%以上かつ旅行期間が5泊以内であることを基準に示しています。従来は参加者が半数に満たない場合は給与課税の対象とされていましたが、質問事例では参加率38%でも全社員に参加機会を提供し、会社が全体補助額の一部として支払ったことなどから、実態を勘案して非課税と認められました。参加者に現金を支給したり、特定役員のみが招待される旅行は課税されるため、福利厚生費枠で非課税とする際は取扱いを確認する必要があります。
非居住親族の扶養控除と特定親族特別控除の書類提出
令和7年度税制改正では、合計所得金額が900万円以下の納税者について扶養控除申告書の控除対象扶養親族に「特定親族特別控除」が新設されました。新制度により特定親族のうち16~30歳と19歳以上23歳未満の扶養親族を控除対象にする場合は63万円の特定親族特別控除が適用されます。国外に居住する扶養親族については親族関係書類と送金関係書類を提出しないと控除が受けられません。これらの書類は原則として原本を提出する必要があり、パスポートの写しや翻訳文の添付が求められます。
中小企業庁「親族外経営承継税制」検討の中間報告
中小企業庁は、「親族外経営承継税制」(現行の暦年贈与税特例制度)の後継制度に関する中間報告書を公表しました。現行制度は令和5年度末で終了する予定ですが、制度の延長と拡充を求める声が多く、今回の報告では、複数の新しい支援措置案が盛り込まれています。主な案として、経営権承継時の資金繰り支援や株式譲渡益課税の猶予措置の拡充、親族外の従業員や第三者への承継を促進する税額減免などが検討されています。
サービス提供地の国内・国外取引の整理
クラウドサービスやサブスクリプションサービスを提供する場合、実際の業務提供地が国内にあってもサーバが国外にあるなど、サービスの提供地の判定が難しいケースが増えています。消費税法では、役務提供の対価に係る課税区分は「役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地」で判断することになり、サービスの提供地が国外と判定されれば輸出免税となります。役務の提供が国内で行われる場合は課税取引として課税されるため、契約条項や取引実態を確認し、国内外双方の消費税負担を適切に管理することが求められます。
新たに設立された法人とインボイス登録
設立間もない法人がインボイス制度に対応するためには、登録申請と事務準備が重要です。課税事業者が登録申請を行った場合、申請受理の翌日から登録事業者として扱われます。免税事業者が設立当初からインボイスを発行するには、登録申請書に登録希望日を記載し、希望日の15日前までに提出しなければなりません。申請受理までの期間はe-Tax申請で約1ヶ月、書面申請で約1.5ヶ月程度が目安です。登録通知書が届くまでの間、取引先から請求書の発行を求められた場合は、登録申請中である旨を説明し、登録日以降に適格請求書を発行することになります。購入側の仕入税額控除を受ける際には、登録通知書到着までの請求書等と登録後の適格請求書を分けて保存する必要があります。
FAQ―日ウクライナ新租税条約の概要
日本とウクライナとの間で締結された新しい租税条約は、両国間の投資と人材交流を促進するため、二重課税の防止と税務協力の強化を目的としています。主なポイントは、利子・配当・使用料に対する源泉税率の引き下げ、条約適用範囲の拡大、税務情報の交換手続きの迅速化などです。特に、利益配当への源泉税率は10%から5%に、使用料は10%から0%に引き下げられ、企業の国際取引コストが軽減されます。日本企業がウクライナで得た所得に対する課税調整方法の明確化も盛り込まれており、税務リスクの軽減に繋がるとされています。
第3867号では、研究開発税制の拡充やリース会計基準の実務対応など、多くの最新トピックが取り上げられました。今後も税制改正に伴う新制度や実務上の注意点が示されるため、会計・税務担当者は情報収集と社内体制の整備に努める必要があります。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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