No.210(2025/8/22):組織再編税制の基礎4
- DAIMON STAFF
- 8月22日
- 読了時間: 3分

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連の基礎・Tips等をお伝えしています。
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第210回の今回は、「税務通信3860号『ゼロから
はじめる組織再編税制』第4回 組織再編税制
とは」を参考に、組織再編税制の核心部分を
解説します。
組織再編税制とは、合併・分割・株式交換・
現物出資などの組織再編成を行った法人や、
その株主に対する課税上の取扱いを定めた規
定の総称です。ポイントは「譲渡損益の取扱
い」と「繰越欠損金の引継ぎ」であり、制度
を適切に理解することで、再編に伴う税コス
トの最適化が可能になります。
まず、組織再編により資産等が移転すると、
原則として時価評価が行われ、譲渡損益が発
生します。たとえば、合併により被合併法人
の資産が存続法人に移転する場合、原則とし
て含み損益が実現することになります。しか
し、実態として再編前後に経済的な実質が変
わらないと評価される場合には、課税を繰り
延べる仕組みが設けられています。
これが「適格組織再編成」の考え方です。適
格要件を満たす場合、資産は帳簿価額で引き
継がれ、譲渡損益は発生しません。この考え
方は合併だけでなく、分割、現物出資、現物
分配、株式交換、株式移転にも共通して適用
されます。逆に、要件を満たさない非適格再
編では、通常通り時価評価課税が行われます。
次に、繰越欠損金の引継ぎについても適格・
非適格の区別が大きな影響を持ちます。適格
合併であれば原則として被合併法人の欠損金
を引き継ぐことができますが、グループ内合
併では一定の要件を満たさない場合、欠損金
が切り捨てられるケースもあります。これは、
欠損金を利用した租税回避を防ぐための措置
です。また、資産を移転する受け手法人側
(承継法人)にも、繰越欠損金の切り捨てが
発生する場合があるため注意が必要です。
一方で、非適格再編では、被合併法人などの
欠損金は引き継げませんが、受け手側の欠損
金は切り捨てられません。この違いを理解し
ていないと、意図しない税コストが発生する
恐れがあります。
さらに、税務以外にも確認すべき点がありま
す。
・消費税については、再編に伴う資産移転が
課税対象かどうか、納税額への影響があるか
を確認する必要があります。
・法人事業税や住民税の均等割では、資本金
等の額が変動することで納税額が変わる可能
性があります。
・不動産の移転が生じる場合、登録免許税
(合併は0.4%、分割等は2%)や不動産取得
税の負担も重要な検討項目です。
・契約書に印紙税が課されるケースも多く、
合併契約書や吸収分割契約書には4万円の印
紙が必要です。
たとえば、被合併法人に5億円の土地がある
場合、所有権移転登記により200万円の登録
免許税が課税されます。事前にこれを見込ん
でいなかった場合、思わぬ資金負担となる恐
れがあります。なお、不動産取得税は、合併
であれば非課税ですが、分割や現物出資など
では一定の要件を満たさなければ課税されま
す。
組織再編を実行する際は、どうしても適格性
や繰越欠損金の引継ぎ可否ばかりに目が行き
がちですが、それだけでは不十分です。消費
税・地方税・登録免許税・印紙税など、複数
の税目をまたいで総合的に検討を行うことが、
税コストを最小限に抑えるカギになります。
次回は、具体的な適格判定のフローや、実務
における判定の難所、誤りやすいケースにつ
いて取り上げる予定です。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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