No.211(2025/9/9):組織再編税制の基礎5
- DAIMON STAFF
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更新日:11 分前

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連の基礎・Tips等をお伝えしています。
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第211回の今回も「税務通信3863号『ゼロからはじめる組織再編税制』第5回 組織再編税制
とは」を参考に、100%親子法人間の合併における適格判定」についてご紹介します。
1.なぜ「適格合併」が重要なのか
組織再編税制において「適格合併」となるかどうかは、税務上の取扱いを大きく左右します。適格合併に該当すれば、被合併法人の資産・負債は簿価で引き継がれ、含み益に課税されません。一方、非適格合併となると資産が時価評価され、含み益課税が発生し、繰越欠損金の引継ぎも制限されます。
このため、M&Aやグループ内再編においては「適格か非適格か」を誤らないことが極めて重要になります。
2.100%親子法人間合併の全体像
100%グループ内での合併は大きく次の2パターンに分類できます。
・親法人を合併法人とする合併(典型的な親子合併)
・子法人を合併法人とする合併(いわゆる逆さ合併)
実務上は前者が多く見られますが、いずれのケースでも法人税法上は「完全支配関係法人間の合併」として整理されます。
3.完全支配関係と要件
まず押さえるべきは「完全支配関係」という概念です。
法人税法では、発行済株式等の100%をグループ内で保有していることを条件とします。議決権ベースで100%であっても、発行済株式数ベースで100%でなければ完全支配関係は認められません。
典型的な誤解として「議決権100%=完全支配関係」と思い込むケースが挙げられますので、注意が必要です。
(例えば第三者に対し議決権のない株式を発行している場合は、議決権保有割合が100%でも完全支配関係があることにはならないため注意が必要です。)
完全支配関係法人間の合併が適格と認められるには、次の2つの要件を満たせば足ります。
(1)対価要件
(2)完全支配関係要件
支配関係法人間や共同事業型の合併と異なり、必要要件は非常にシンプルです。
4.親法人を合併法人とする100%親子法人間の合併
結論から言えば、必ず適格合併に該当します。
その理由を2つの要件で整理します。
(1)対価要件
会社法上、親法人が子法人を吸収合併する場合には「合併対価を交付できない」とされています(会社法749条1項3号)。つまり、必然的に「無対価合併」となります。
法人税法上も、合併法人(親法人)が被合併法人(子法人)の発行済株式を全て保有している場合には、無対価で対価要件を満たすとされています。
(2)完全支配関係要件
合併前から親法人が子法人株式を100%保有している以上、完全支配関係は明らかに成立しています。このため、完全支配関係要件も自動的に満たされます。
したがって、この場合は非適格合併となる余地はなく、常に適格合併となります。
5.逆さ合併の取扱い
一方、やや特殊な「逆さ合併」(子法人が親法人を吸収するケース)では、会社法上、子法人が親法人株主に対して合併対価を交付する必要があります。
ただし、この場合も合併法人(子法人)の株式のみを交付すれば要件を満たすため、やはり適格合併に該当します。
6.実務上の確認ポイント
適格判定自体はシンプルですが、申告書作成や税務調査対応の観点からは「証拠書類の備え付け」が重要です。具体的には、以下のような資料確認が必要です。
・被合併法人の登記簿謄本(発行済株式総数の確認)
・株主名簿、法人税別表二(株主情報の確認)
・申告書添付の「完全支配関係図」
税務調査では「本当に100%か」「議決権ではなく発行済株式総数で確認しているか」といった観点が問われやすいため、実務担当者は事前に押さえておくべきでしょう。
7.まとめ
・親法人を合併法人とする100%親子法人間の合併は、常に適格合併に該当します。
・難しい判定は不要ですが、「議決権100%=完全支配関係」との誤解には注意が必要です。
・逆さ合併の場合も、子法人株式のみを交付すれば適格合併となります。
・実務上は証拠書類の準備・確認が不可欠です。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。
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