No.206(2025/6/6):ベンチャーキャピタルファンド 出資の会計処理に関する実務指針改正
- DAIMON STAFF
- 6月6日
- 読了時間: 3分
更新日:6月8日

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
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第206回の今回は、「ベンチャーキャピタルファンド
出資の会計処理に関する実務指針改正」につい
てご紹介します。
改正移管指針第9号の概要と背景
2025年3月11日、企業会計基準委員会(ASB
J)は、改正移管指針第9号「金融商品会計に
関する実務指針」を公表しました。この改正
の中心は、ベンチャーキャピタルファンド
(VCファンド)に組み入れられた非上場株式
を「時価」で評価できるようにするという点
です。
背景として、近年ファンド投資を通じたス
タートアップ支援の重要性が高まり、非上場
株式の「取得原価」評価では財務諸表の透明
性が損なわれ、投資判断の妨げになるとの指
摘がありました。これを受けて、国内外の機
関投資家から「時価評価」への転換を求める
声が高まり、ASBJがこの改正に着手するに至
ったものです。
現行と改正後の違い
現行制度
現行制度では、組合等(VCファンド等)への
出資額は、構成資産が金融資産である場合、
市場価格のない株式は「取得原価」で評価し、
その評価額を基礎として出資者の財務諸表に
反映されます。
一方、上場株式等は「時価」で評価され、評
価差額は「その他有価証券評価差額金」とし
て純資産の部に計上されます。
改正後(本実務指針第132-2項)
改正後は、一定の要件を満たすVCファンドに
対しては、非上場株式も「時価」で評価可能
となり、評価差額の持分相当額は純資産の部
に計上されます。これにより、財務諸表の情
報がより実態に即したものとなり、投資家の
判断に資する内容となります。
適用要件
以下の要件を満たす場合に限り、上記の「時
価評価」が適用されます
・運営者が投資業を業とする者(例:無限責任組合員)
・当該組合等の決算において時価評価が実施されていること
また、子会社株式や関連会社株式は評価対象
から除外されます。
注記と経過措置
新たな会計処理を適用する場合、以下の注記
が必要です
・本実務指針第132-2項を適用している旨
・適用する組合等の選定方針
・適用した出資額の合計額
なお、適用は2026年4月1日以降開始する会計
年度から強制ですが、2025年4月1日以降から
の早期適用も可能です。経過措置として、初
年度期首に評価差額の純資産加減や減損損失
の処理方法も規定されています。
実務への影響と留意点
この改正により、企業は以下の対応が求めら
れます
・適用対象となる組合等の明確な選定
・時価評価体制の整備
・初年度からのスムーズな財務報告対応
また、ファンド・オブ・ファンズのように組
合が他の組合へ出資するケースについても、
出資先組合ごとに要件を判定し、満たす場合
のみその評価結果を会計処理に反映すること
になります。
まとめ
今回の改正は、ベンチャー投資の透明性を高
め、機関投資家による成長資金の供給を促す
重要な一歩です。企業にとっては、評価体制
と注記体制の整備が求められる一方、より正
確な企業価値の表現につながるメリットも大
きいといえます。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。
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