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賃貸オフィスを資産に計上 ~今後のリース基準その5 現行基準との相違点~

更新日:2021年11月16日

こんにちは 大門綜合スタッフです。 毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。 第28回目の今回は、日本の新リース基準の ベースとなるIFRSのリース基準(IFRS16号) その5にお話を戻したいと思います。 前回まで ・日本のリース基準の改訂が今後行われると いうこと ・それはIFRS16号とほぼ同じ内容となると考 えられること ・改訂された場合にはオフィス賃料も資産計 上されるということ ・IFRS16号が改訂された理由は実質的にはフ ァイナンスリース(資産計上)でもオペレー ティングリース(費用処理)として処理して いる場合が多かったから ・IFRS16号は使用権モデルという考え方を採 用している ・IFRS16号の借手の会計処理は従来のファ イナンスリース処理に一本化されたものと考 えればOK ・IFRS16号の対象となるリース取引は特定可 能な資産で、その使用を支配する権利が移転 される契約が対象であること をお伝えしました。 今回は、その他の現行の日本のリース基準と の相違点についてお話します。 前述のとおり、IFRS16号でのリース取引にお ける借り手側の会計処理は ざっくりと言えば「従来の日本基準における ファイナンスリース処理に一本化された」と 考えて頂いて結構です。 しかし、細かい部分では従来の処理とは異な る部分があります。 それは以下の点となります。 (1)勘定科目名 (2)リース負債の計上額 (3)例外的に重要性の低い取引はオフバラン ス処理が認められている という点となります。 (1)については、前述したとおり、「使用権 資産」という科目名で計上されることとな る点が相違点となります。 (2)については、現行基準においてはリース 負債の金額は以下の金額のうち、低い方の金 額と規定されています。 ・見積現金購入価額 ・リース料総額の割引現在価値 これは、現行リース基準の考え方が、経済的 実体が購入に該当する場合が対象のため、 購入する場合には、上記の二つの金額のうち 安い方で購入するのが経済実態に沿っている というロジックです。 しかし、IFRS16号においては使用権を取得す るという考え方であるため、「リース料総額の割 引現在価値」のみとなりました。 (3)については、現行基準においても「リー ス契約1件当たりのリース料総額が300万円以 下のリース取引」は賃貸借取引が認められて います。 IFRS16号は、国際会計基準であるため、この 金額の基準が5,000ドルがひとつの目安とな っている点、 及び、1年内の短期のリース取引については 賃貸借取引が認められているという点が現行 基準と異なる点となります。 以上のように、考え方としては現行基準のフ ァイナンスリースに一本化されたと考えて頂 いて結構ですが、 今回お伝えしたような細かい違いがあるため、 実務上の処理においては留意が必要となって きます。


大門綜合スタッフです。


毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。


先日、2021年4月より始まる事業年度から導

入される新収益認識基準の「基本論点」とい

うものが会計士協会から公表されました。


「Q&A 収益認識の基本論点(第1回)」の公表について


以前のメルマガでも新収益認識基準の基本に

ついてお伝えしました。


協会の公表の中で、何か有用な情報がありま

したら、今後お伝え出来ればと思います。




さて、第29回目の今回も、日本の新リース基

準のベースとなるIFRSのリース基準(IFRS16

号)について、その6 最終回です。



前回まで


・日本のリース基準の改訂が今後行われると

いうこと


・それはIFRS16号とほぼ同じ内容となると考

えられること


・改訂された場合にはオフィス賃料も資産計

上されるということ


・IFRS16号が改訂された理由は実質的にはフ

ァイナンスリース(資産計上)でもオペレー

ティングリース(費用処理)として処理して

いる場合が多かったから


・IFRS16号は使用権モデルという考え方を採

用している


・IFRS16号の対象となるリース取引は特定可

能な資産で、その使用を支配する権利が移転

される契約が対象であること


・IFRS16号の借手の会計処理は従来のファ

イナンスリース処理に一本化されたものと考

えればOK


・現行基準との相違点は(1)勘定科目名、(2)

リース負債の計上額、(3)オフバランス可能

な例外取引は5,000ドル以下または短期契約


ということをお伝えしました。



今回は、IFRS16号のお話の最終回です。


IFRS16号を適用した場合に、財務諸表にどの

ような影響が出るのかについてお話いたしま

す。


結論から申し上げますと、主に以下の3つの

影響があり、貸借対照表は悪化し、損益計算

書の営業利益は改善されます。


<貸借対照表への影響>

①資産と負債が増加する


②財務指標が悪化する


<損益計算書への影響>

③営業利益が改善される



では、上記の内容について順にご説明します。


<貸借対照表への影響>

①資産と負債が増加する


これは簡単ですね。今まで費用処理されてい

たリース料が割引計算されたうえで使用権資

産として資産計上されます。


また、相手勘定としてリース債務も計上され

ることになるため、貸借対照表は資産と負債

が増加することとなります。


使用権資産は所有権が移転する場合には経済

的耐用年数で、移転しない場合にはリース期

間に渡って減価償却がなされます。


リース債務はリース料支払いとともに減少しま

す。


(リース支払時の仕訳)

リース債務 XX / Cash XX

支払利息 XX /



次に「②財務指標が悪化する」についてご説

明します。これは①の結果としての影響とな

ります。


すなわち、資産と負債が増加することにより、


ROA(総資産利益率)や負債比率(自己資本

と負債の比率)、資産回転率(資産に対する

売上の比率)が悪化します。



最後に損益計算書への影響である「③営業利

益が改善される」です。


これは賃貸借処理の場合には支払リース料は

「販売費及び一般管理費」として計上されま

すが、


IFRS16号により資産計上された場合には、使

用権資産の減価償却費については変わらずに

「販売費及び一般管理費」に計上されますが、


リース料を支払った際の相手勘定である支払

利息は営業外費用に計上されます。


そのため、


支払利息分だけ営業費用が減少することとな

り、営業利益は改善されることとなります。



このように、IFRS16号をベースとした新リー

ス基準が施行された場合、会計処理のみでは

なく財務諸表へも影響が出てくることになり

ます。


まずは結論としてどのような処理になるか、どの

ような影響が出るのかを押さえておいて頂ければ

と思います。



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