No.220(2026/05/29):インボイス制度に登録すべきか迷ったときに知っておきたいこと
- DAIMON STAFF
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更新日:2 時間前

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
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今回は、フリーランスや小規模事業者の方からよくいただく、インボイス制度の登録に関するご相談についてお話しします。
先日、ある事業者の方からこんなご相談をいただきました。「今年は売上が少なかったので、免税事業者のまま請求書を送ったところ、取引先から『インボイスに登録してほしい』と言われてしまいました。やはり皆さん登録されているのでしょうか。」というものです。
同じように悩んでいらっしゃる方は多いと思いますので、今回はこのご相談をきっかけに、インボイス制度との向き合い方を整理してみます。
はじめに、消費税の基本的なしくみを少し整理させてください。消費税は、事業者が国内で対価を得て行う商品の販売やサービスの提供(役務の提供)といった取引そのものに対して課されるものです。ここで大切なのは、その取引が消費税の対象になるかどうかは取引の中身によって決まるのであって、契約で消費税を「付ける・付けない」と取り決めたかどうかや、相手が免税事業者かどうかによって変わるものではない、という点です。
免税事業者が行う取引も、消費税のしくみの上ではれっきとした課税の対象となる取引です。ただ、その事業者は売上の規模が小さいために、国に消費税を納める義務を免除されている、というだけのことです。ですから、「相手が免税事業者だから、その取引には消費税が関係ない」「消費税分は支払わなくてよい」という考え方は、消費税のしくみには当てはまりません。役務の提供を受ければ、その対価には消費税相当額が含まれている、というのが消費税の基本的な考え方だからです。
今回のご相談では、契約のときに「本体価格に消費税相当額を加えて支払う」と取り決めていたとのことでした。もっとも、仮にそうした取り決めがなかったとしても、役務の提供という取引そのものに消費税はかかっています。契約での取り決めは、あくまで総額をいくらにするかを定めるものであって、消費税が発生するかどうかを左右するものではありません。いずれにしても「相手が免税事業者だから消費税分は当然に払わなくてよい」という理屈は成り立たない、ということになります。
次に、登録するかどうかの判断についてです。ここでいちばん大切なのは、インボイス(適格請求書発行事業者)への登録は、あくまで事業者ご自身が決める任意のものだということです。取引に消費税が課されること自体は避けられませんが、自分がインボイス発行事業者として登録するかどうかは、事業者の自由に委ねられています。
取引先は「登録してもらえると助かります」とお願いすることはできます。けれども、登録を強制することはできません。それどころか、取引上の立場が強い側が、登録しないことだけを理由に、一方的に支払金額を引き下げたり、これまで支払っていた消費税相当額を払わなかったり、取引そのものを打ち切ったりすると、独占禁止法や取適法の観点から問題になることがあります。これは公正取引委員会が示している考え方です。双方がよく話し合い、納得して価格を見直すのは構いませんが、一方的に不利な条件を押し付けることは認められない、という点は知っておいて損はありません。
ここで、負担をやわらげるしくみについて整理しておきます。よく似た話なのですが、立場によって関係する制度が二つに分かれますので、分けてご説明します。
一つめは、あなたが登録せず、免税事業者のままでいる場合に関係するものです。この場合に効いてくるのは、取引先(買い手)の側が受けられる経過措置です。これは、登録していない事業者から仕入れた買い手が、その仕入れにかかる消費税相当額の一定割合を控除できる、というものです。割合は段階的に下がる予定で、令和8年度の税制改正後は、令和8年9月30日までは80パーセント、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70パーセント、令和10年10月1日から令和12年9月30日までは50パーセント、令和12年10月1日から令和13年9月30日までは30パーセントと縮小し、その後に廃止される予定です。今あなたが免税事業者のままでも取引を続けやすいのは、取引先がこの控除を受けられるおかげで、取引先の負担がまだそれほど大きくないからだと考えられます。ただ、令和8年10月以降は割合が下がっていきますので、その分、取引先からの相談が増えていく可能性はあります。
二つめは、あなたが思い切って登録し、課税事業者になった場合に関係するものです。この場合には、自分自身の消費税の負担を軽くする「2割特例」というしくみがあります。これは、もともと免税事業者だった方がインボイス発行事業者になったときに、納める消費税を売上にかかる消費税額の2割だけにできるというもので、いわば実質的に8割を差し引いて計算できるイメージです。ただし、この2割特例は令和8年9月30日の属する課税期間までで終了します。その後については、個人事業者に限って、令和9年分と令和10年分の2年間は納める消費税を売上税額の3割とできる「3割特例」が新たに設けられました。法人にはこの延長はありません。
少し数字が入り組みましたが、大切なのは、「登録しないと取引先が受ける控除(8割など)」と「登録した自分が使える特例(2割特例など)」は別ものだ、という整理です。ご相談のなかの「9月までに」という区切りは、こうした制度がいずれも令和8年9月で一つの節目を迎えることと関係していると思われます。
それでは、実際にどう判断すればよいのでしょうか。ポイントは、ご自身の取引先がどういう相手かを見極めることです。取引先の多くが消費税の申告をしている課税事業者で、インボイスを必要としている場合には、登録しておいたほうが取引を続けやすくなる場面が増えるかもしれません。一方で、取引先が一般の消費者や、もともとインボイスを必要としない相手が中心であれば、あわてて登録する必要は薄くなります。
もし、いったん登録したあとで「やはり免税事業者に戻りたい」と考える場合にも、手続きと期限があります。登録の取りやめを希望するときは、取りやめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに、所定の届出書を提出する必要があります。この日を過ぎてしまうと、戻れるのがさらに次の課税期間になってしまいますので、戻ることを考える場合は早めの確認が大切です。
最後に、判断にあたって意識していただきたいことをお伝えします。それは、登録するかどうかは「取引先に言われたから」ではなく、「自分の事業にとってどちらが有利か」で決めていただきたい、ということです。特定の取引先一社の都合だけで決めてしまうと、その関係に縛られてしまいます。ご自身の取引先全体の顔ぶれ、これからの売上の見通し、そして経過措置や2割特例といった軽減のしくみのスケジュールを並べて見比べたうえで、納得して選んでいただくのがいちばんです。
なお、インボイス制度の経過措置や特例は改正が重ねられており、適用の細かな要件は事業の状況によっても変わります。実際のご判断にあたっては、最新の取扱いをご確認のうえ、数字を一緒に見ながら進めていきましょう。お一人で抱え込まず、いつでもご相談いただければと思います。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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