No.204(2025/4/25):オペレーティング・ リースの税務処理と新リース会計基準の不一致
- DAIMON STAFF
- 4月25日
- 読了時間: 4分
更新日:5月27日

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
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第204回の今回は、「オペレーティング・
リースの税務処理と新リース会計基準の不一
致」についてご紹介します。
税務と会計の処理の乖離:オペレーティング・リースの取扱い
2025年3月31日に公布された「所得税法等の
一部を改正する法律」(令和7年法律第13
号)により、法人税法第53条が改正され、新
リース会計基準への対応が図られました。
これにより、オペレーティング・リース(以下、
OL)の税務上の取扱いが明確化されました。
税務上の処理
改正後の法人税法第53条では、リース取引以
外の賃貸借取引に基づき支払う金額のうち、
各事業年度において債務が確定した部分の金
額を、その事業年度の損金の額に算入するこ
ととされています。
つまり、OLに該当するリース取引については、支払
リース料のうち、当該事業年度に債務が確定した
部分のみが損金算入の対象となります。
会計上の処理
一方、新リース会計基準では、原則としてす
べてのリース取引について使用権資産および
リース負債を計上し、使用権資産に係る減価
償却費とリース負債に係る利息相当額を費用
として計上します。
これにより、OLについてもオンバランス処理が求められます。
このように、税務上は従来通りの賃貸借処理
(オフバランス)を維持し、会計上はオンバ
ランス処理を求めることから、税務と会計で
処理が不一致となり、申告調整が必要となり
ます。
実務上の対応:申告調整の必要性
税務と会計の処理の不一致により、申告調整
が必要となります。具体的には、会計上計上
された減価償却費および利息費用と、税務上
損金算入される支払リース料の差額を、
法人税申告書において加算・減算調整する必要が
あります。
例えば、会計上の費用計上額が12,443千円
(減価償却費11,312千円+利息費用1,131千
円)であり、税務上損金算入される支払リー
ス料が12,000千円である場合、差額の443千
円を加算調整(留保)として申告書に記載す
る必要があります。
減価償却制度の見直し:残価保証額の取扱い
改正法人税法施行令では、所有権移転外リー
ス取引に係るリース資産の減価償却について、
取得価額から残価保証額を控除しないことと
されました。これにより、1円まで償却する
ことが可能となります。
この改正は、2027年4月1日以後に締結された
所有権移転外リース取引に適用されます。た
だし、2027年3月31日までに締結された所有
権移転外リース取引についても、経過措置に
より、改正後のリース期間定額法による償却
を選択することができます。
経過措置を適用する場合は、事前に届出書を納
税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
貸手の会計処理の変更
改正により、貸手の会計処理においても変更
が生じています。具体的には、リース譲渡に
係る収益および費用の帰属事業年度の特例
(旧法人税法第63条)が廃止され、リース譲
渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(旧消費
税法第16条)も廃止されました。
これにより、貸手はリース譲渡に係る収益お
よび費用を、実際の譲渡等の時期に基づいて
計上する必要があります。
まとめ
新リース会計基準の導入により、会計と税務
の処理に乖離が生じ、特にオペレーティン
グ・リース取引において申告調整が必要とな
ります。
また、減価償却制度の見直しや貸手
の会計処理の変更も含め、実務上の対応が求
められます。
企業の経理・財務部門においては、これらの
改正内容を正確に把握し、適切な対応を行う
ことが重要です。特に、申告調整の正確な実
施や、経過措置の適用に関する手続きについ
ては、専門家の助言を得ることをお勧めしま
す。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。
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