こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
66回目の今回は日本郵政がオーストラリアの
子会社の事業の一部を売却した件についてお
伝えします。
先週、以下のような記事がありました。
<郵政、視界不良の国際戦略 豪部門売却後の実質価値ゼロ>
2021年4月21日 日経電子版
要約すると・・・、
・日本郵政は傘下のオーストラリアの国際物
流会社、トール・ホールディングスの一部事
業を現地ファンドに売却すると発表した
・トールの豪州とニュージーランドの企業向
け物流や宅配部門を現地投資ファンド「アレ
グロ」に780万豪ドル(約7億円)で売却する
・この部門は赤字が続いており、簿価と売却
価格の差額の減損処理などで計674億円を特
別損失として計上する
・6200億円で買収したトールは簿価を負債が
大きく上回る「実質価値ゼロ」の状態
・日本郵政は国内市場が先細る中、収益向上
への具体策を描けずにいる
というもの。
このトールという会社を日本郵政が買収した
のは2015年で、その際には高く評価されてい
ました。
その際の記事がまだ残っています。
<日本郵政、豪トール社買収を発表 物流世界5位に>
2015年2月18日 日経新聞
<財務相と総務相、日本郵政の豪社買収を評価>
2015年2月20日 日経新聞
上記の記事では日本郵政グループと、アジア
太平洋で最大の物流企業であるトールの組み
合わせは非常に強力で、
「世界でトップ5に入る物流企業となる」と
この買収にはかなりの期待がかけられており、
麻生太郎副総理・財務相や当時の高市早苗総
務相も評価していました。
しかし、わずか2年後の2017年には6,200億円
で買収したトールの株式を4,003億円減損処
理し
2007年の郵政民営化以来初の赤字となる大き
な要因となりました。
<郵政、初の赤字転落 前期最終400億円>
2017年4月26日 日経新聞
わずか2年の間に、4千億円が消えてなくなっ
たわけです。
そしてその後、当該部門の立て直しをするこ
とも出来ず、今回の売却となりました。
2015年のトール社買収M&Aは、郵政3社(日
本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)が上場
する直前に行われたものであり、
日本郵政株の需要を高める為に、ろくにトー
ル社の将来性を考えることなく実施されたM
&Aであるとも言われています。
トール社の件もあり、日本郵政の株は上場時
に一株2,000円弱であったものが、今では半
値以下となっています。
おそまつなM&A及びその後の統合作業(PM
I)のせいで上場時に株を購入した人は大き
く損をしたことになるのです。
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