こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
64回目の今回は監査意見についてお伝えした
いと思います。
前々回の第62回において、KAMの適用につい
てお伝えしました。
Key Audit Mattersの略で日本語では「監査
上の主要な検討事項」を意味し、
監査報告書において監査人が主に検討した内
容を記載することで、監査報告書の情報価値
や監査の信頼性を高めることが目的でした。
そもそもKAMが適用された理由は、監査報告
書が報告書とは名ばかりで、
以下の4つの意見のどれかが記載されるのみ
である、いわば意見書で、紙ペラ1~2枚の
ものとなります。
4つの意見とは・・・、
①無限定適正意見
②限定付適正意見
③不適正意見
④意見不表明
これらの意味は以下の通りとなります。
①無限定適正意見
これは一言で言えば、「財務諸表の数値を信
用することができます」という意味の意見と
なります。
小さなミス等はあるかもしれませんが、全体
として財務諸表利用者の判断を妨げるほどの
ミスはありませんよという意見で、
ほとんどの会社はこの意見をもらうために、
仮に大きなミスがあった場合には数値を修正
してこの意見をもらうよう努力をします。
②限定付適正意見
簡単に言えば、
「全体として会社の数値を信用して大丈夫で
すが、一部に重要なミス等があるので、財務
数値を利用するにはその点に留意が必要」
という意見です。
これは、財務諸表利用者に影響を与えるよう
なミスや会計ルール違反があるので、その点
について監査意見の中で注意を促しています。
ただし、その点以外は信用して大丈夫、とい
う意見です。
企業側としては、監査法人にミス等の指摘を
受けたが、当該数値の修正がなんらかの理由
により出来なかった場合で、
かつ、その金額が「財務諸表全体を信用でき
ない」とするほど重大ではなかった場合に上
記の意見が表明されることが多いと言えます。
③不適正意見
簡単に言えば、「この会社の財務数値は信用
できません。」というもの
この意見は、財務諸表に致命的な欠陥がある
場合に出されます。この意見がついていたら、
誰もこの監査報告書を信用してくれません。
銀行融資が下りない可能性もあり、上場会社
であれば上場廃止基準に抵触します(直ちに
上場廃止になるわけではありません)。
④意見不表明
簡単に言うと、監査人が「財務数値が正しい
ことを示す根拠資料を入手できなかった」と
いうものになります。
そんなの意見となるのか?という意見ですが、
監査上必要な手続がなんらかの事情で実施で
きなかった場合等、
監査人側で期限までに結論を出せなかった場
合に記載されます。
結果的に財務数値について、信用して良いと
も信用できないとも「意見を表明しない」と
いう意見なので、
不適正意見と同様に財務諸表が信用できない
ものとなり、こちらも上場廃止基準に抵触し
ます。
③の不適正意見を出すには、監査人も不適正
であることを示す根拠を入手する必要があり
ますが、
そんな根拠をわざわざ監査人に提供する企業
は通常ありません。
そのため、③の不適正意見はほとんど目にす
ることはありませんが、④の意見不表明は頻
繁ではありませんが、たまに目にします。
JPXのHPにも直近の②~④の意見が表明され
た企業のリストが記載されていますが、②と
④はありますが③は無いようです。
<不適正意見・意見不表明・限定付適正意見等一覧>
日本取引所グループ
上述のように、不適正意見の場合には適正で
はないことを示す根拠が必要ですが、その根
拠を監査人が入手した場合には不適正意見と
なり、
その根拠を監査人に示さず、監査人が必要な
手続を実施出来ない場合には意見不表明とな
るのです。
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