こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
83回目の今回は、2021年3月期から義務化さ
れたKAMの項目についての記事がありました
のでご紹介します。
<財務監査の重要項目「KAM」 減損リスクが最多>
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO75124520V20C21A8DTA000/
2021年8月26日 日経電子版
要約すると・・・、
・企業の財務監査の重要項目を監査報告書に
記載する「KAM(カム)」で、固定資産の減
損リスクに関する項目が全体の3割と最多だ
ったことがわかった
・あずさ監査法人が2021年3月期の有報など
で集計
・新型コロナウイルス禍などを背景に資産に
見合う収益性の動向が焦点に
・投資家との対話を深める手段として浸透す
るかが注目される
というもの。
2021年4月2日の第62回でもお伝えしましたが、
KAMとはどのようなものかをおさらいすると、
KAMとは・・・・
Key Audit Mattersの略で日本語では「監査
上の主要な検討事項」を意味し、監査報告書
に記載されるものです。
これまでの監査報告書は以下の①~④のみの
シンプルな記載であったため、投資家からす
るとあまり有用なものではありませんでした。
①監査意見(財務諸表が適正か否か)
②監査意見の根拠
③監査人の責任
④利害関係の有無
そこで、KAM(監査上の主要な検討事項)と
して以下の項目が2021年3月期から追加的に
記載されることになりました。
・監査上の主要な検討事項の内容
・監査人が監査上の主要な検討事項であると
決定した理由
・監査における監査人の対応
強制適用初年度である2021年3月期の監査報
告書(有価証券報告書の最後に添付されてい
ます)について、
あずさ監査法人が独自に開発した分析ツール
で上場企業を中心とした約2600社のKAMの内
容を調べたというのが上記の記事です。
その結果は固定資産の減損が752社と29%にの
ぼり、最も多かったと言うことです。
その他、繰り延べ税金資産の評価は369社と1
4%、のれんの評価は301社と12%あり、会計上
の見積もり関連が多かったとの結果です。
これは予想通りと言えば予想通りでしょう。
会計監査において、売上の金額や現金預金の
金額を確認する手続は比較的簡単です(売上
には複雑なものもありますが)。
売上には受注先からの発注書や入金等の外部
証拠があることが一般的であり、現金預金は
実査や預金通帳等で確認が可能です。
しかし、固定資産の減損の必要性の有無や、
繰延税金資産の評価等は最も難易度の高い監
査手続の一つとなっています。
それは、企業が行っている将来のキャッシュ
フローの見積について、企業の経営計画等の
妥当性から検証する必要があるためで、
将来の答えの無いものについて妥当か否か、
不整合が無いか等を検証する必要があるから
です。
特に、2021年3月期はコロナ禍で企業のキャ
ッシュ・イン・フローが減少している企業が
多く減損の検討が必要となるケースが多く、
また、将来の経営計画も新型コロナの収束が
見えない中でその妥当性を検証するのは非常
に困難な手続であり、
監査人が主要な検討事項とせざるを得ない状
況となっています。
新型コロナが収束した後も、難易度の高い上
記の見積項目がKAMの記載として多くを締め
る可能性は高いと考えられますが、
このような難易度が高く、金額的影響も大き
い項目がKAMとして開示されることにより、
投資家との対話を深める手段として浸透し、
監査報告書の信頼性が高まることが期待され
ているのです。
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