こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
67回目の今回はコーポレートガバナンスコード(CGコード)に人権の尊重を求める規定が盛り込まれる件についてお伝えします。
昨日、以下のような記事がありました。
<統治指針に「人権」明記 金融庁・東証、企業の積極対応促す>
2021年5月5日 日経新聞
要約すると・・・、
・金融庁と東京証券取引所は6月に施行する上場企業へのGCコード(企業統治指針)に人権の尊重を求める規定を盛り込む
・中国のウイグル族の人権侵害で対中制裁に踏み切った欧米の投資家を中心に問題意識は高い
・日本企業の人権意識が低いと映れば投資対象から外れるリスクもあり、指針で自発的な対応を促す
というもの。
東証のGCコード改定については、今年初めの2021年1月8日のメルマガでもお伝えしました。
その際にもお伝えしましたが、企業統治を円滑に行うために企業がやるべきことをまとめたものがCGコードであり、
コード(指針)は「基本原則(5個)」「原
則(30個)」「補充原則(38個)」の3部、計73原則で構成されています。
(CGコードの原文は東証の以下に掲載されて
います。
これらの企業がやるべき指針の中に「人権尊重を求める」という規定が盛り込まれることになったというのが上記の記事です。
このコードの改定により、どのような業界が影響を受けることになるのでしょうか。
その答えの一つとして太陽光発電メーカーが挙げられます。
その理由としては、太陽光発電には発電パネルが必要となり、太陽光パネルの大半にはポリシリコンという物質が欠かせません。
そのポリシリコンの世界における供給量の約半分を生産しているのが新疆ウイグル自治区であり、
以下の記事のように新疆で生産されるポリシリコンやその他の重要材料を巡り、強制労働との関連性を危惧する声があります。
<太陽光パネルにも新疆問題、強制労働との関連懸念>
2021 年 4 月 13 日 WSJ
実際に同地区で人権侵害が行われているかどうかはわかりませんが、
人権団体や米当局は中国が100万人以上のウイグル人を収容しているとみており、
米国や西欧諸国の太陽光業界では、多くの企業が既に同地域との取引縮小を目指して奔走しているとのことです。
話は戻り、GCコードに人権尊重を求める規定が追加されれば、中国製の発電パネルを使用している太陽光発電企業は、
当該パネルの生産において人権侵害が行われていないことを確認する必要が出てきます。
しかし、欧米諸国の調査を受け入れていない現状で、当該状況を確認するのは現実的ではないでしょう。
その場合には、価格の高い非中国製太陽光パネルを使用することになり、発電コストは高くなることになります。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)が導入されている日本においては、そのコスト増は電力利用者である我々が負担することになります。
逆に言えば、現在の太陽光発電の価格は、上記の安いポリシリコンが無ければ成り立たないもの、という事になるのです。
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