こんにちは
大門綜合スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
36回目の今回も、企業における新型コロナウ
イルス感染症対策で、にわかに注目されてき
ている電子契約についてお伝えします。
今週も、タイムリーな記事が日経に出ていま
した(要約は後半で)。
<企業法務 変わる制度>(7) 電子署名、法的な懸念解消
2020/9/21 日経電子版
前回まで・・・、
その1において
・電子契約の有効性について
・契約は保証契約や消費賃貸契約、宅地建物
売買等媒介契約等の特定の契約以外は、書面
ではなく、口頭でも契約は可能
・そのため、それらの特定の契約以外であれ
ば電子契約も可能
その2において
電子契約による主なメリットは
①契約書面作成の手間削減
②印紙代削減
③保管費用等の削減
の3つである
ということをお伝えしました。
その3の今回は、上記記事にもあります電子
契約における"電子署名"の法的な有効性につ
いてお伝えします。
なお、電子署名とは、紙の契約書における記
名・押印部分と考えて頂ければ結構です。
上述の日経の記事を要約すると・・・、
(1)現状で普及している電子署名サービス
には現行法上は位置づけが不明確との指摘が
あった
(2)政府は十分な本人確認の措置が取られ
ている場合には、法的に有効であるとの見解
を公表
(3)懸念が解消され、民間での利用に弾み
がつくとみられる
というもの。
上述の通り電子契約は便利ですが、電子化に
伴い、署名が偽造がしやすくなってしまって
は、電子契約書自体の信頼性を失ってしまい
ます。
そこで、電子署名の信頼性を担保するために、
電子契約における電子署名には現状2種類の
方法によりその信頼性を担保しています。
一つ目は、当事者型と呼ばれるもので、従来
の実印を使用した契約の仕組みをイメージし
て頂ければ良いかと思います。
当事者型署名の手段として日本で最も普及し
ているのが、e-Taxで用いられるマイナン
バーカードの電子証明書(公的個人認証サー
ビス)です。
紙面署名における実印登録先である法務局の
ような役割を担う認証局があり(マイナン
バーの場合にはJ-LIS)、認証局が電子署名の
有効性を認証します。
これにより、電子署名が本人によるものであ
ることを担保できるのですが、契約当事者双
方が電子証明書を所持しておく必要があり、
その都度認証局から認証を受ける必要がある
ため手間や時間がかかるというデメリットが
あります。
もう一つの方法が、事業者型(または立会人
型)と言われるもので、公証役場をイメージ
するとわかりやすいかと思います。
公証役場では、契約の当事者が公証人の面前
で宣誓すると、立会人である公証人が対象と
なる契約書に記名押印して、当事者が合意し
たという事実を証明します。
これをデジタル化したものが事業者型の電子
署名です。
弁護士ドットコムのような立会人サービスを
提供する事業者がクラウド上にプラットフ
ォームを用意し、
そこで当事者同士が電子署名をするのではな
く、契約に電子上で立ち会ったサービス提供
者が、
「当事者間で契約を締結したことを確認し
た」という形で契約書が作成されるものです。
事業者型の方が、契約者にとっては便利なの
ですが、当事者同士が署名をするのではなく
事業者が署名するという形となるため、
それが電子署名法3条に規定される「本人に
よる署名」と言えるのかが指摘されていまし
た。
これについて、本人認証の際にスマートフォ
ンなどに送信したワンタイムパスワードの入
力を求める2要素認証等により、
「他人が容易に同一のものを作成することが
できないと認められる」という「固有性の要
件」を満たせば、事業者型の電子署名サービ
スも法的に有効である
という見解を政府が公表したというのが、こ
ちらの日経の記事となります。
利便性の高い事業者型電子署名が、法的にも
有効な署名であると政府が見解を出したこと
で、普及が一段と広がると考えられます。
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