こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部
統制関連の基礎やTips等をお伝えしています。
95回目の今回は企業の監査役が横領を見落と
した場合の記事が先週出ていましたのでご紹
介します。
<名ばかり監査役に一石 横領見落とし責任、審理差し戻し>
2021年11月20日 日経電子版
要約すると・・・、
・監査役が従業員の横領を見落とした場合、
責任は問われるのかについての監査職務の根
幹に関わる判決の行方に注目が集まっている
・経理担当の元従業員が2007年から16年まで、
会社の当座預金口座から自身の口座へ送金を
繰り返し、計2億3500万円超を横領した
・会社側は、横領した元経理担当の従業員と、
監査で不正を見落とした元会計限定監査役の
両方に損害賠償を求めて提訴していた
・横領を見抜けなかった元会計限定監査役の
賠償責任を巡る裁判で最高裁は、「責任な
し」とした高裁判決を破棄
・専門家は「名ばかり監査役に一石を投じ
る」とみている
というもの。
横領の手口としては、経理担当元従業員が自
身の口座へ送金していることから、
これが9年間も発覚していないということは、
経理担当者は一人であったと推測されます。
その点では、不正のトライアングルにおける
不正をする「機会」が存在した(=不正が出
来る状態になっていた)と考えられます。
この会社には監査役が存在し、監査役が年に
一度は決算書の預金の残高が銀行口座の残高
と一致していることを確認しており、
その点では一応の不正の機会を防止する統制
はとられていたと考えられます。(一般的に
は統制としては弱すぎますが)
そして、この経理担当元従業員は、銀行残高
の証明書を偽造することにより、9年間、発
覚を免れていたということです。
監査役が企業の会計の監査を行う際には、業
務をどこまで深く実施する必要があるかについて
の規程はなく、
善管注意義務を払っていれば足りると考えられま
す。
その為、一般的には銀行残高証明書の真偽ま
で確認する必要はなく、
また、真偽を確認出来る技術を持っている必
要もないと考えられてきました。
公認会計士による外部会計監査においても資
料の真偽の判定までは求められておらず、
会計士資格の不要な監査役にそこまで求める
のは非常にハードルが高いと考えられます。
しかし、今回の最高裁による高裁判決の破棄
は、監査役による、より深い監査の実施を求め
る結果に繋がる可能性があります。
記事にもありますが、これまで企業の監査役
は会計に詳しくない人間が名誉職的に監査役
に就く例も多くあるのが実情ですが、
この裁判の行方次第では、そのような安易に
監査役に就任することが大きなリスクとなる
可能性が出てくると言えます。
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