No.262(2026/07/10):令和8年度改正の研究開発税制・設備投資促進税制と賃上げ要件の実務対応
- DAIMON STAFF
- 7月10日
- 読了時間: 5分

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
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第261回の今回はProfession Journalより令和8年度改正の研究開発税制・設備投資促進税制と賃上げ要件の実務対応についてご紹介します。
令和8年度の税制改正では、企業の経営や投資判断に直結する制度がいくつか大きく動きました。なかでも、研究開発に対する税額控除の仕組みと、新たに創設された設備投資促進税制は、多くの会社にとって資金計画や経営戦略を見直す契機になるものです。今回はこの2点を中心に、企業の実務に引きつけてご説明します。
まず、研究開発税制の基本をおさらいしておきましょう。これは、自社が研究開発のために支出した費用の一定割合を、法人税額から直接差し引ける制度です。税率を下げるのではなく、税額そのものを減らせるため、効果が非常に大きい点が特徴です。製品の改良、新技術の開発、製造プロセスの改善など、幅広い活動が対象になりえます。中小企業から大企業まで、研究開発に取り組む会社であれば検討する価値がある制度です。
今回の改正では、この研究開発税制が複数の点で拡充されました。税額控除の率(いわゆる控除率)の見直しや、控除できる上限額の改正が行われています。また、海外の機関などに研究を委託した場合の取扱いも見直されています。中小企業向けには、税額控除の権利を3年間にわたって繰り越せる仕組みが新たに設けられました。これは、黒字にならないと効果が出ない税額控除の弱点を補う意味があり、利益が安定しない成長途上の中小企業には特に注目してほしい変更点です。
さらに注目度が高いのが、「戦略技術領域型」と呼ばれる新しい研究開発税制の創設です。これは、国が重点的に育てたい産業技術の分野を指定し、その分野に取り組む試験研究費に対して、既存の研究開発税制とは別枠で税額控除を与えようというものです。令和11年3月末までの時限措置ですが、対象分野の認定を受ければ通常の控除に上乗せして優遇が受けられる可能性があります。自社の事業が国の重点分野と重なるかどうか、一度確認してみる価値があります。
一方で、今回の改正には企業が必ず押さえておくべき「落とし穴」もあります。それが、特定の企業に対する研究開発税制等の適用停止措置(いわゆる不適用措置)の延長と厳格化です。
この制度はやや複雑なのですが、要点をかいつまんでお伝えします。利益が十分に出ているにもかかわらず、賃金も上げず国内投資もしない大企業については、研究開発税制などの税額控除の適用を止めるというルールが設けられています。今回の改正でこのルールが令和10年度末まで延長されるとともに、要件がより厳しくなりました。
具体的には、社員の給与(継続雇用者への支給総額)を一定以上増やしているかどうかが重要な判定基準になります。この賃上げ要件を満たさない場合、国内設備投資に関係する税制や、研究開発税制の一部についても、適用が認められなくなる可能性があります。「利益は出ているが人件費も設備投資も増やしていない」という状態だと、せっかく使える税制の恩恵を受けられなくなるわけです。
従来は「賃上げ要件と国内投資要件の両方を満たさない場合」に不適用になっていたケースも、今回の改正で「どちらか一方でも満たさない場合」に不適用となる税制が増えました。基準が厳しくなった分、要件の充足状況を経営計画に組み込んで管理しておく必要があります。
もう一つ、今回の改正で企業の実務に関わる重要な制度として「特定生産性向上設備等投資促進税制」が新設されました。これは、国内における高付加価値の設備投資を強力に後押しするための税制で、経済安全保障や生産性向上に資する設備を対象に、思い切った税制上の優遇を設けるものです。即時償却(取得した設備の費用を購入した年に全額費用計上できる制度)も含まれており、設備投資の資金負担を大幅に軽減できる可能性があります。
この設備投資促進税制には、先ほどご説明した不適用措置も設けられています。つまり、賃上げや国内投資の要件を満たさない場合には、この優遇も受けられなくなります。逆に言えば、積極的な人材投資と設備投資を両立させている会社ほど、恩恵が大きくなる設計になっています。
これらの改正を踏まえて、企業として今すぐ確認・検討していただきたいことが二点あります。
一点目は、自社の試験研究費の範囲と管理の見直しです。研究開発税制は支出の実態が適切に把握・記録されていないと、申告時に控除の根拠が示せません。どの費用が対象になるか、日々の経費管理と連動した体制が整っているかを確認してみてください。特に製造業や情報サービス業など、継続的な技術開発を行っている会社では、想定以上の費用が対象に含まれるケースがあります。
二点目は、給与・賃金の計画と税制要件の連動です。今回の改正で賃上げ要件が税額控除の適用の前提条件として一層重要になりました。来期の人件費計画を策定する際に、税制上の要件を意識した水準を設定することで、優遇を確実に受けられる準備ができます。賃上げを検討している会社にとっては、税制面からも後押しされる環境が整ってきたといえるでしょう。
今回の税制改正は、投資と賃上げを積極的に行う会社を優遇し、そうでない会社には恩恵を絞るという方向性がより鮮明になっています。制度の内容を正しく理解した上で、経営計画や資金計画に反映させることが、今後の競争力強化につながるはずです。
【参考記事(Profession Journal)】
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。




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