No.207(2025/6/20):組織再編税制の基礎
- DAIMON STAFF
- 6月20日
- 読了時間: 4分

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連の基礎・Tips等をお伝えしています。
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第207回の今回は、「税務通信3848号『ゼロから
はじめる組織再編税制』第1回 組織再編成ってなに?」
を参考に、組織再編成の基本についてご紹介します。
■ 組織再編は中小企業にも広がる実務課題
「組織再編成」といえば、大企業のM&Aや経
営統合を連想しがちですが、近年では中小企
業でも活用される場面が増えています。特に
事業承継を目的としたM&Aが一般化するなか、
合併や分割といったスキームは、経営資源の
再配置やガバナンスの見直しを行う有効な手
段となりつつあります。
また、複数回のM&Aを通じてグループ化を進
める企業においては、組織再編を戦略的に活
用することで、収益性や生産性の向上といっ
た成果が顕著に現れるケースも少なくありま
せん。
■ 組織再編税制とは:実務家がつまずきや
すいポイント
組織再編を検討する際に欠かせないのが「組
織再編税制」の理解です。これは、会社法に
基づいて行われる合併・分割・出資等の行為
に対し、法人税法等の規定を適用して課税関
係を整理するものです。
しかし、税制上の要件が複雑であること、会
社法と法人税法で名称や定義が異なることな
どから、実務家でも戸惑うことが少なくあり
ません。制度の概要を正しく把握することが、
実務上のリスク回避とスムーズな再編実行に
直結します。
■ 合併と分割:基本の理解が第一歩
組織再編の基本となるのが「合併」と「分
割」です。それぞれの法的性質や再編後の資
産・負債の承継構造に違いがあるため、活用
場面に応じて使い分ける必要があります。
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合併とは
合併は、複数の会社が契約に基づいて一つに
なる行為です。吸収合併では、消滅する会社
のすべての権利義務が存続会社に承継されま
す。
活用例:
- 同一事業を複数法人で展開している場合の
統合
- M&Aによる事業の包括的取得 なお、実務で
は合併案件が最も多く、全体の 半数近くを
占めています。特に中小企業にお いては、
簡便性や承継の明確性から、吸収合 併が好
まれる傾向にあります。
分割とは
分割は、会社が有する資産・債務・契約など
の一部または全部を、他の会社に承継させる
手法です。承継先が既存会社か新設会社かに
より、吸収分割と新設分割に分かれます。
活用例:
- 特定事業部門の切り出しと子会社化
- グループ再編による子会社・孫会社構造の
整理
- M&Aにおける特定事業の譲渡 分割は、資産
単位での再編が可能であり、柔 軟な再編ス
キームの構築が可能です。例えば、 株式な
ど特定資産だけを分割の対象とするこ とで、
グループ構成を調整するケースもあり ます。
■ 実務上の注意点:用語の混乱とコミュニ
ケーション
組織再編に不慣れな現場では、「合併」「分
割」といった用語の意味が誤って使用される
こともあります。たとえば、「この事業だけ
を子会社に合併したい」といった相談は、実
質的には「分割」に該当することがあります。
こうしたケースでは、図を用いて意図を可視
化することが非常に有効です。また、法人税
法と会社法では呼称が異なるため、関係者と
の認識を揃えるためにも、法的用語の整理と
明確な説明が不可欠です。
■ まとめ
組織再編成は、単なるM&A手法にとどまらず、
経営の柔軟性を高めるための重要な戦略ツー
ルです。とくに中小企業経営において、事業
承継や成長戦略の一環として合併・分割を活
用する場面は既に多くなっており、今後さら
に
増加すると考えられます。
今後はその他の再編手法──現物出資、現物
分配、株式交換、株式移転──についても順
次解説していきます。
制度の全体像をつかみ、実務への適用力を高
め
るための一助となれば幸いです。
それでは、今日はこの辺で。
良い週末をお過ごしください。
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