No.103(2022/1/28): 会計上の引当金の4要件

こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部
統制関連の基礎やTips等をお伝えしています。
103回目の今回は会計上の引当金についてお
伝えします。
突然ですが質問です。
会計上の引当金には貸倒引当金や賞与引当金、
退職給付引当金等がありますが、会計上の引
当金の4要件をご存知でしょうか。
答えは以下の4つになります。
①将来の特定の費用または損失であること
②将来の費用(損失)の原因が既に発生して
いる
③将来の費用(損失)の発生の可能性が高い
④将来の費用(損失)の金額を合理的に見積
もることができる
上記の①~④がどのような事を意味するかイ
メージがつきますでしょうか。一つずつ解説
します。
<①将来の特定の費用または損失であること>
これは今現在は発現していない費用又は損失
であることを意味します。
例えば賞与引当金を想像してみてください。
社内規程で10月~3月の勤務に対しては7月に、
4月~9月の勤務に対しては12月に,それぞれ
賞与が支払われるとします。
今期の3月決算で考えると、実際の賞与の支
給は2022年7月であり、決算日(2022年3月
末)においてはまだ支払いが発現していない
将来の特定の費用です。
<②将来の費用(損失)の原因が既に発生している>
これについても賞与引当金で考えてみると、
将来(2022年7月)に発生する費用の原因で
ある勤務自体は
2021年10月~2022年3月自体において提供さ
れているため、原因が既に発生していると言
えます。
<③将来の費用(損失)の発生の可能性が高い>
賞与については、ある程度業績に連動するも
のではありますが、2022年7月支給の賞与に
ついては
2022年3月末の決算時点においては業績はほ
ぼほぼ確定しており、発生の可能性は高いと
言えるでしょう。
<④将来の費用(損失)の金額を合理的に見
積もることができる>
賞与は賞与規定に規定された計算式によって
計算されることが一般的であるため、金額は
合理的に見積ることが可能と言えます。
業績連動する場合でも、上述のようにほぼほ
ぼ確定した業績を一定の計算式で計算するこ
ととなるため、
その金額は合理的な見積が可能なものと言え
るのです。
このように引当金というものは、上記の4要
件を満たした場合には、会計上、計上する必
要があります。
(「計上することが出来る」ではなく、「計
上しなければなりません」)
要は、期末時点で原因は発生しているが、支
払等は発生していない場合において、
発生の可能性が高く、見積可能であるのであ
れば、当期の費用として事前に費用計上する
必要がある、
それが会計上の引当金の本質と言えるでしょ
う。
(なお、税法上は、引当金の計上は殆ど認め
られていません。
税法上は、債務確定主義に基づいて損金(税
務上の費用)が確定されます。
そのため、まだ費用として支出が確定してい
ない見積金額である引当金は税務上は認めら
れず、
認められているものであっても、一定の計算
方法が定められており、見積の要素は可能な
限り排除されています。)