こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
72回目の今回は近年導入が増加している譲渡
制限付株式報酬制度についてお伝えします。
突然ですが、株式会社で増資をする場合には
どのような方法があるでしょうか。
普通に考えれば、公募増資や株主割当有償増
資、第三者割当有償増資により、
金銭を会社に払い込んでもらうことにより、
資本金の額を増加させることが出来ます。
また現物出資という手段で、金銭以外の現物
を会社に出資し、その対価として資本金を増
加することも可能です。
さらには資本剰余金を資本金へ振替えるとい
う方法もあります。
いずれにせよ、一般的には株主となる人が、
金銭などを会社に出資することにより会社の
資本金が増加する
というのが一般的です(資本剰余金も株主が
払い込んだ金額うち、資本金とならなかった
ものであり、
なんらかの金銭等が会社に出資されているの
が一般的です。)
会社法施行前の旧商法においては最低資本金
制度があり、株式会社は最低1千万円以上の
金銭等の出資が必要とされていました。
その後、商法に代わって施行された会社法に
より、最低資本金の制度は廃止され、1円で
も会社を設立出来るようになりました。
しかし、その後も資本金を増加させるには金
銭等の払い込みは必要と考えられていました
が、
2016年頃から、実務上は役員への報酬を金銭
ではなく金銭を得る権利(報酬債権)で付与
し、
同時に役員はその報酬債権を会社へ現物出資
するというロジックで実際の金銭等の払い込
みを行わずとも
資本金を増加させるという手法が実施されて
きました。
この手法は資本金を増加させるのが目的では
なく、役員へ金銭等の払い込みなしで株式を
発行し、
一定の期間、会社の業績向上のために貢献し
た後に、当該株式を役員が売却することによ
り報酬を得るという、
役員へのインセンティブ報酬として活用され
てきました。
この手法は、株式発行後に一定期間株式を譲
渡することが制限されているため、リストリ
クテッドストックとも呼ばれます。
この手法は上記のようなトリッキーなロジッ
クによって実務上行われてきましたが、2021
年3月の会社法改正において、
「"上場会社において"、"取締役等の報酬等"
として株式を交付する場合に限り、金銭の払
込みを必要としない」
という改正が行われました。これにより、一
定の条件の下、無償で株式を発行することが
会社法上も明文化されました。
(非上場会社には適用されない規定であるた
め、非上場会社は引き続き、上述のロジック
で実施することとなります)
当該手法の会計処理について、詳しくここで
は説明しませんが、
最も採用されるであろう事前交付型(当初か
ら株式が付与されるケース)
で新株を発行する場合においては、以下のよ
うな仕訳がなされることになります。
<株式発行時>
長期前払費用等 XX / 資本金 XX
<その後一定期間>
株式報酬費用 XX / 長期前払費用等 XX
要は、役員への報酬を株式で支払っていると
考えればわかりやすいかと思います。
旧商法の時代には考えられなかった仕訳です
が、今後はこのような仕訳が普通になってい
くと考えられます。
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