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DAIMON STAFF

包括利益のリサイクリングとは

更新日:2021年7月18日



こんにちは


大門綜合会計事務所スタッフです。


毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。

73回目の今回は第68回でお伝えした包括利益

において論点となるリサイクリングについて

お伝えします。



第68回のおさらいですが、包括利益と

は・・・、


・連結財務諸表を作成している上場会社の有

価証券報告書において包括利益計算書が作成

されており、その中で記載がなされるもの


・簡単に言えば「企業の純資産の期首と期末

の差額」(正確には、持分所有者との取引は

除かれる)


・包括利益と当期純利益の違いは、包括利益

は当期純利益にプラスして投資有価証券等評

価差額金等が含まれる


・これらの損益計算書を通らない(=当期純

利益に含まれない)ものを「その他の包括利

益」と呼ぶ


・ひとまずは包括利益は当期純利益に「投資

有価証券評価差額」をプラスしたものと覚え

ておくと考えやすい


・包括利益が導入された目的の一つは国際会

計基準(IFRS)との整合性を取るため



というものでした。





では、今回お伝えする包括利益のリサイクリ

ングとはどういうものなのでしょうか。



事例を使ってお伝えすると・・・、


100千円で取得した投資有価証券の2020年の

期末評価額が150千円だったとします。


当期純利益がゼロだったとすると、包括利益

はいくらになるでしょうか?


答えは簡単ですね。


50千円です(期末評価額150千円-取得価額1

00千円)


包括利益の内訳は「当期純利益ゼロ+その他

の包括利益50千円」となります。



次に、2021年に当該投資有価証券を150千円

で売却しました。


2021年も当期純利益ばゼロであった場合、包

括利益及びその内訳はどのようになるでしょ

うか。


答えは以下のようになります。



包括利益:ゼロ円


包括利益の内訳:


当期純利益 50千円

その他の包括利益 △50千円



当期の売却により実現した売却益50千円(売

却額150千円-取得原価100千円)は実現利益

として当期純利益に計上されます。


そして、この50千円は2020年に包括利益に一

度計上されたものですよね。


上記のように、既に認識したその他の包括利

益50千円を当期純利益に振り替える処理のこ

とをリサイクリングと呼びます。


いったん計上した包括利益を種類の異なる利

益(当期純利益)に再び組み替えることから

「組替調整」や「再分類」とも呼ばれます。


そして、当該リサイクリングの額はその他の

包括利益の内訳項目ごとに注記する必要があ

ります。

(包括利益の表示に関する会計基準 第9号)



言うなれば、未実現の評価差額は包括利益で

認識し、実現した場合には実現した期に当期

純利益で認識するために、


過去に包括利益で認識した額を実現した期に

は当期純利益で認識する処理と考えて頂けれ

ばイメージがつくと思います。



この処理により包括利益の定義である


「包括利益=企業の純資産の期首と期末の差

額」


という状況と、


「当期に実現した利益の当期純利益での認

識」


の両方が整合する状況となるのです。

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