こんにちは
大門綜合会計事務所スタッフです。
毎週金曜日、会計・財務、税務、監査、内部統制関連のTips等をお伝えしています。
73回目の今回は第68回でお伝えした包括利益
において論点となるリサイクリングについて
お伝えします。
第68回のおさらいですが、包括利益と
は・・・、
・連結財務諸表を作成している上場会社の有
価証券報告書において包括利益計算書が作成
されており、その中で記載がなされるもの
・簡単に言えば「企業の純資産の期首と期末
の差額」(正確には、持分所有者との取引は
除かれる)
・包括利益と当期純利益の違いは、包括利益
は当期純利益にプラスして投資有価証券等評
価差額金等が含まれる
・これらの損益計算書を通らない(=当期純
利益に含まれない)ものを「その他の包括利
益」と呼ぶ
・ひとまずは包括利益は当期純利益に「投資
有価証券評価差額」をプラスしたものと覚え
ておくと考えやすい
・包括利益が導入された目的の一つは国際会
計基準(IFRS)との整合性を取るため
というものでした。
では、今回お伝えする包括利益のリサイクリ
ングとはどういうものなのでしょうか。
事例を使ってお伝えすると・・・、
100千円で取得した投資有価証券の2020年の
期末評価額が150千円だったとします。
当期純利益がゼロだったとすると、包括利益
はいくらになるでしょうか?
答えは簡単ですね。
50千円です(期末評価額150千円-取得価額1
00千円)
包括利益の内訳は「当期純利益ゼロ+その他
の包括利益50千円」となります。
次に、2021年に当該投資有価証券を150千円
で売却しました。
2021年も当期純利益ばゼロであった場合、包
括利益及びその内訳はどのようになるでしょ
うか。
答えは以下のようになります。
包括利益:ゼロ円
包括利益の内訳:
当期純利益 50千円
その他の包括利益 △50千円
当期の売却により実現した売却益50千円(売
却額150千円-取得原価100千円)は実現利益
として当期純利益に計上されます。
そして、この50千円は2020年に包括利益に一
度計上されたものですよね。
上記のように、既に認識したその他の包括利
益50千円を当期純利益に振り替える処理のこ
とをリサイクリングと呼びます。
いったん計上した包括利益を種類の異なる利
益(当期純利益)に再び組み替えることから
「組替調整」や「再分類」とも呼ばれます。
そして、当該リサイクリングの額はその他の
包括利益の内訳項目ごとに注記する必要があ
ります。
(包括利益の表示に関する会計基準 第9号)
言うなれば、未実現の評価差額は包括利益で
認識し、実現した場合には実現した期に当期
純利益で認識するために、
過去に包括利益で認識した額を実現した期に
は当期純利益で認識する処理と考えて頂けれ
ばイメージがつくと思います。
この処理により包括利益の定義である
「包括利益=企業の純資産の期首と期末の差
額」
という状況と、
「当期に実現した利益の当期純利益での認
識」
の両方が整合する状況となるのです。
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